天翔る(あまかける)

 村山由佳著『天翔る』を読み終えた。

 『天使の卵』シリーズを終え、『天』がかりで選んだ本。

 冒頭の場面で、父が動物園に行こうと娘を誘い、競馬場に行くシーンから物語は始まる。

 競馬好きの自分は、予想だにしていなかっただけに、これまで触れてきた精神科医や画家、染色家と写真家、さらに馬という生き物を紡ぎ出す作家の感性・感覚が、非常に自分と似通っているように思え、親近感がより強まった。

 

 とはいえ、物語は競馬や騎手の話ではない。

 「エンデュランス」という100マイル(160キロ)を走り抜く馬の耐久レースの中で、レースにかかわるそれぞれの人間模様。嬉しさ、哀しさ、恋心が波のように繰り返される。

 ラスト近くで、不覚にも目頭が熱くなり、読みながら涙がこぼれそうになった。

 

 『天使の卵』シリーズの何とも言われぬ恋愛感情の物語と違い、爽やかで感動すら感じる物語だった。いまのところ、村山由佳著の中で一番好きな作品と言える。