世界的なパンデミックの様相をなしている昨今、気晴らしに昭和62年に出版された文庫本「草競馬流浪記」(著・山口瞳)を読み返しています。
当時は、全国に公営競馬が点在していたのですが、現在では廃止された競馬場も多々あり、懐かしさに浸っています。
今はなくなってしまった山形・上山(かみのやま)競馬場、数十年前に訪れた時、正門前で桃やブドウを売っているおじさんがいたっけ。
競馬場の中には、なぜか交通公園らしきものがあって、コースを馬が走っているさなかに子供たちが交通ルールを守って三輪車で行き来している風景がのどかでした。
公営競馬という響きに一種の懐かしさと解放感を思い「草競馬」と呼び、飲む・打つ・買うという人間の本能にまかせて地方の競馬場を尋ねてゆく話。同行する人々との機微やちょっとした旅路表現に癒されます。
文中には「競馬はロマンで買え」など、時と場合による名文句が散りばめられている。
なかでも「何事によらず一所懸命というのが好きだ」という言葉が気に入っています。有馬記念で有終の美を飾ったリスグラシューは、まさにそんな感じの馬だと思っています。現在では、その系統を引き継いでいるように感じるのがラッキーライラック。さらなる成長と勝負強さの増すことを期待してやみません。
殺伐とした話題ばかりの日々には、「草競馬流浪記」のような世界へタイムスリップすることで、心の空気が浄化されるような気がします。